「ChatGPT」「Gemini」「Claude」などの生成AIで、離婚協議書を作ることはできるのでしょうか。
生成AIの普及により、契約書や各種文書をAIで作成することが珍しくない時代になっています。
離婚協議書についても、「まずはAIを使って自分で作ってみよう」と考える方は、今後ますます増えていくでしょう。
結論から申し上げると、
AIを活用して離婚協議書のたたき台を作成することは十分可能です。
上手に活用すれば、文書作成の時間を短縮できるだけでなく、夫婦で話し合うべき項目を整理するきっかけにもなります。
しかし一方で、「AIで文章を作ること」と「将来のトラブルをできる限り防ぐ離婚協議書を作ること」は、まったく別の話です。
今回は、行政書士の立場から、AIで離婚協議書を作成するメリット・デメリット、そして利用する際の注意点についてお伝えします。
AIで離婚協議書を作るメリット
AIを利用する最大のメリットは、短時間で文書のたたき台を作成できることです。
例えば、
「未成年の子どもが一人いる夫婦の離婚協議書を作成してください。」
とAIへ依頼すると、養育費や財産分与、親子交流など、一般的な内容を盛り込んだ離婚協議書の案を作成してくれます。
また、
- 話し合うべき項目を整理できる
- 文書の構成を考える手間が省ける
- 文章表現の参考になる
といったメリットもあります。
「まずは自分たちで考えてみたい」という方にとって、AIは非常に便利なツールと言えるでしょう。
AIは「文章」は作れても、「協議」はできません
ここが最も重要なポイントです。
離婚協議書は、文章が完成すればよい書類ではありません。
その前に、
- 何を決める必要があるのか
- どこまで取り決めておくべきなのか
- 将来どのようなトラブルが起こり得るのか
を夫婦で整理し、話し合っておくことが重要です。
AIは、入力された情報を整理し、文章としてまとめることは得意です。
しかし、
利用者が入力していない事情や、利用者自身も気付いていない問題点まで把握することはできません。
- 大学進学時の教育費はどうするのか
- 医療費や習い事などの特別な支出はどう考えるのか
- 住宅ローンが残る自宅をどうするのか
- 財産分与の方法や時期はどうするのか
- 将来、収入や生活状況が大きく変わった場合はどうするのか
こうした事項は、AIが自動的に決めてくれるものではありません。
利用者が「何を決めるべきか」を理解し、その内容をAIへ適切に伝えて初めて、協議書へ反映されます。
AIは「協議書を書くこと」は得意でも、「協議書を作るために必要な協議」を進めることはできないのです。
そのため、AIだけで離婚協議書を完成させようとすると、重要な取り決めが抜け落ちてしまう可能性があります。
AIは最新の法令や制度にも注意が必要です
AIは非常に便利ですが、回答内容が常に最新の法令や制度に対応しているとは限りません。
例えば、父母の離婚後の子の養育に関する民法等の改正法が2026年4月に施行され、親権や監護、養育費、親子交流などに関する制度が見直されています。
また、AIはもっともらしい文章を作成しても、その内容が必ずしも正確とは限りません。
そのため、AIが作成した内容については、現在の法令や制度に適合しているかを確認することが重要です。
行政書士の役割は「文章を書くこと」ではありません
行政書士というと、「書類を作る人」というイメージを持たれることがあります。
もちろん、文書を作成することも仕事の一つです。
しかし、離婚協議書について本当に重要なのは、その前段階にあります。
ご相談者様のお話を伺いながら、
「この点も決めておいた方が安心ですね。」
「この内容は書面に残しておいた方がよいでしょう。」
「この表現では解釈が分かれる可能性があります。」
というように、一人ひとりの状況に合わせて協議内容を整理し、必要な事項をご提案していくことも行政書士の大切な役割です。
離婚協議書は、離婚するためだけの書類ではありません。
離婚後の生活を安心して送るための約束を書面として残す書類です。
だからこそ、「何を書くか」だけでなく、「何を決めておくべきか」が重要になります。
AIと行政書士は、それぞれ得意なことが違います
私は、AIと行政書士は対立するものではなく、それぞれ得意分野が異なると考えています。
AIは、
- 情報を整理すること
- 文書のたたき台を作ること
- 表現を分かりやすくすること
が得意です。
一方、行政書士は、
- ご相談者様それぞれの事情を丁寧に把握すること
- 必要な取り決めを一緒に整理すること
- 現行法令や制度との整合性を確認すること
- 将来起こり得るトラブルを見据えて内容をご提案すること
を得意としています。
AIの便利さと、専門家によるヒアリングや実務経験。
それぞれの強みを組み合わせることで、より安心できる離婚協議書を作成することができます。
AIで作成した離婚協議書のチェックだけでもご相談ください
「AIで作ってみたけれど、この内容で問題ないだろうか。」
「自分たちの場合、この条項は必要なのだろうか。」
このようなご相談も歓迎しております。
最初からすべてを依頼する必要はありません。
AIで作成したたたき台をもとに、内容の確認や修正だけをご依頼いただくことも可能です。
なお、養育費や財産分与などの条件について夫婦間でまだ合意に至っていない場合や、相手方との交渉が必要な場合は、行政書士ではなく弁護士へご相談いただくことが適切です。
行政書士がお手伝いできるのは、原則として夫婦間で合意した内容を書面として整理・作成することや、公正証書作成に向けたサポートとなります。
まとめ
AIは、離婚協議書作成においても非常に便利なツールです。
たたき台を作成したり、話し合うべき項目を整理したりする場面では、大いに活用できるでしょう。
しかし、離婚協議書は単なる文書ではありません。
ご夫婦それぞれの事情を踏まえ、何を決め、どのように書面へ残すかによって、離婚後の安心感は大きく変わります。
AIが得意なのは「文章を作ること」。
行政書士が得意なのは「協議内容を整理し、将来を見据えた書面へ仕上げること」。
それぞれの強みを活かすことで、より納得できる離婚協議書を作成できると私は考えています。
行政書士権藤涼太事務所では、一からの離婚協議書作成はもちろん、AIで作成した文案の確認や修正、公正証書作成に向けたサポートにも対応しております。
「AIで作ってみたけれど、この内容で大丈夫だろうか。」
そんなときは、お気軽にご相談ください。
※本記事は、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情によって適切な対応は異なりますので、具体的な内容については専門家へご相談ください。

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