離婚協議書を作らずに離婚するとどうなる?後悔しないための7つの取り決め


離婚届を出す前に、決めておきたいこと

離婚することが決まったとき、まず考えるのは離婚届の提出や引っ越し、子どもの生活、今後のお金のことではないでしょうか。

離婚に向けた準備には多くの時間と労力がかかります。そのため、「とりあえず離婚届だけ先に提出しよう」「細かいことは離婚してから話し合えばいい」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、離婚届を提出したからといって、夫婦の間にあるすべての問題が解決するわけではありません。

養育費や財産分与、子どもとの交流方法など、離婚後も関係が続く事柄は少なくありません。

また、2026年4月1日からは、離婚後の共同親権を選択できる制度が始まり、子どもの養育に関するルールも大きく変わりました。

こうした事情を踏まえ、離婚する際に検討しておきたいのが「離婚協議書」の作成です。

今回は、離婚協議書を作成せずに離婚した場合に起こり得る問題と、離婚前に決めておきたい7つの取り決めについて、行政書士の立場からわかりやすく解説します。

目次

そもそも離婚協議書とは?

離婚協議書とは、夫婦が離婚する際に話し合って決めた内容を、書面にまとめたものです。

例えば、次のような内容を記載します。

  • 子どもの親権や養育に関する取り決め
  • 養育費の金額や支払方法
  • 子どもとの交流方法
  • 財産分与の内容
  • 慰謝料の有無や支払方法
  • 年金分割に関する取り決め
  • 離婚後のお互いの約束事

離婚協議書は、夫婦間で合意した内容を明確にし、後から「そんな約束はしていない」「聞いていた内容と違う」といったトラブルが起こることを防ぐための重要な書類です。

離婚協議書がなくても離婚できる?

結論からいえば、離婚協議書を作成しなくても、協議離婚は成立します。

離婚協議書の作成は、法律上義務付けられているわけではありません。

そのため、夫婦が離婚に合意し、法令上必要な事項を満たした離婚届が受理されれば、離婚協議書がなくても離婚できます。

ただし、離婚できることと、離婚後の生活に関する問題が解決していることは別です。

口約束で取り決めを行った場合でも、法的に有効な合意が成立することはあります。しかし、後からその内容を証明することが難しくなる場合があります。

だからこそ、離婚後のトラブルをできる限り防ぐためにも、合意した内容を書面として残しておくことが大切なのです。

離婚前に決めておきたい7つの取り決め

それでは、離婚協議書には具体的にどのようなことを記載すればよいのでしょうか。

ここからは、特に重要な7つの項目について解説します。

① 子どもの親権・監護に関する取り決め

未成年の子どもがいる場合、まず考えなければならないのが親権と監護に関することです。

親権とは、子どもの利益のために、監護や教育を行ったり、財産を管理したりする権限であり、同時に義務でもあります。

2026年4月1日から施行された改正民法により、離婚後の親権について、父母双方を親権者とする「共同親権」と、父母の一方を親権者とする「単独親権」を選択できるようになりました。

これまでの制度では、離婚後の親権者は父母のいずれか一方に限られていましたが、現在は子どもの利益を考慮しながら、父母が協議して親権者を定めることができます。

ただし、共同親権が原則というわけではありません。

共同親権と単独親権のどちらが子どもの利益につながるかを考えて判断することが重要です。

また、共同親権を選択した場合であっても、必ずしもすべてのことを父母双方で決めなければならないわけではありません。

日常的な監護や教育に関する行為については、一方の親が単独で決定できる場合があります。一方、子どもの進学や転居、重要な医療行為などについては、原則として父母双方による判断が必要となることがあります。

そのため、離婚する際には、親権者を決めるだけでなく、次のような点についても話し合っておくとよいでしょう。

  • 子どもは主にどちらの親と生活するのか
  • 日常的な世話や教育は誰が担当するのか
  • 進学や転居など重要な事項をどのように決定するのか
  • 子どもに関する情報をどのように共有するのか

共同親権を選択する場合には、離婚後も父母が協力して子どもを育てていくための具体的な取り決めが、より重要になります。

なお、DVや児童虐待などの事情がある場合には、共同親権が認められないことがあります。

親権に関する判断では、何よりも子どもの利益と安全を優先する必要があります。

② 養育費の金額・支払方法・支払期間

子どもがいる場合、養育費についての取り決めも欠かせません。

養育費とは、子どもが生活し、成長していくために必要な費用のことです。

離婚した後も、父母にはそれぞれの経済力などに応じて子どもを扶養する責任があります。

離婚協議書では、養育費について次のような内容を具体的に定めます。

  • 毎月いくら支払うのか
  • 毎月何日までに支払うのか
  • どの口座に振り込むのか
  • いつまで支払いを続けるのか
  • 進学費用や高額な医療費などをどう負担するのか

例えば、「養育費は毎月5万円を支払う」とだけ記載するよりも、支払日や振込先、支払期間まで明確にしておく方が、後々のトラブルを防ぎやすくなります。

2026年から始まった「法定養育費」とは?

2026年4月1日から、養育費に関する新しい制度も始まりました。

それが「法定養育費」です。

2026年4月1日以降に離婚した場合、離婚時に養育費を取り決めていなくても、一定の要件のもとで、子ども1人につき月額2万円の法定養育費を請求できるようになりました。

ただし、注意していただきたいのは、この金額が養育費の標準額になったわけではないという点です。

法定養育費は、父母が適切な養育費を取り決めるまでの暫定的・補充的な制度です。

実際に必要となる養育費は、父母の収入や子どもの人数、年齢などによって異なります。

したがって、法定養育費の制度ができたからといって、離婚時に養育費を取り決める必要がなくなったわけではありません。

子どもの将来を考えれば、双方が話し合い、適切な金額や支払方法を明確にしておくことが重要です。

③ 子どもとの交流方法

離婚後、子どもと離れて暮らす親が、どのように子どもと交流するのかについても取り決めておくことが大切です。

現在は「親子交流」という表現が使われており、以前から使われていた「面会交流」もこれに含まれます。

親子交流には、直接会うことだけでなく、電話やビデオ通話、手紙などによる交流も含まれます。

例えば、次のような事項を話し合っておくとよいでしょう。

  • 交流の頻度
  • 交流する日時や場所
  • 子どもの送迎方法
  • 電話やビデオ通話の方法
  • 学校行事などへの参加
  • 子どもの体調不良や予定変更があった場合の対応

ただし、親子交流は、親の希望だけで決めるものではありません。

子どもの年齢や気持ち、生活環境、安全性などを考慮し、子どもの利益を最優先に判断することが必要です。

特に、DVや虐待のおそれがある場合には、交流方法を慎重に検討しなければなりません。

④ 財産分与についての取り決め

財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産を、離婚に伴って分けることです。

対象となり得る財産には、次のようなものがあります。

  • 預貯金
  • 不動産
  • 自動車
  • 株式や投資信託
  • 保険の解約返戻金
  • 退職金

財産の名義が夫婦のどちらか一方になっている場合でも、婚姻期間中に夫婦の協力によって形成した財産であれば、財産分与の対象となることがあります。

一方、結婚前から所有していた財産や、相続などによって取得した財産は、原則として特有財産に該当し、財産分与の対象とならない場合があります。

また、住宅ローンが残っている不動産については、特に注意が必要です。

例えば、離婚後も一方が住宅に住み続け、もう一方が住宅ローンを支払うといった約束をする場合です。

夫婦間でそのような約束をしても、当然に金融機関との契約内容が変更されるわけではありません。

不動産の名義変更や住宅ローンの返済方法などについては、金融機関への確認が必要となる場合があります。

財産分与の請求期間も2026年に変更

2026年4月1日施行の改正民法により、財産分与について家庭裁判所に請求できる期間が、従来の離婚後2年から5年に延長されました。

ただし、2026年3月31日以前に離婚した場合は、原則として従来の2年が適用されます。

離婚後に財産分与の話し合いをすることも可能ですが、時間が経つほど財産状況の確認が難しくなる場合があります。

そのため、可能であれば離婚前に財産の内容を整理し、合意事項を明確にしておくことをおすすめします。

⑤ 慰謝料に関する取り決め

離婚する際には、慰謝料について話し合う場合もあります。

慰謝料とは、相手方の不法行為などによって精神的苦痛を受けた場合に、その損害について請求する賠償金のことです。

例えば、不貞行為やDVなどが慰謝料請求の原因となる場合があります。

ただし、離婚すれば必ず慰謝料が発生するわけではありません。

離婚に至った事情や相手方の行為などによって、慰謝料請求が認められるかどうかは異なります。

慰謝料について合意した場合には、金額だけでなく、支払方法や支払期限も明確にしておくことが大切です。

分割払いにする場合は、支払いが遅れた場合の対応についても検討する必要があります。

また、財産分与と慰謝料は法的な性質が異なるため、どの金銭が何の目的で支払われるのかを整理しておくと、後々の誤解を防ぎやすくなります。

⑥ 年金分割に関する取り決め

離婚時に見落とされやすいのが、年金分割の問題です。

年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金記録を、一定の条件のもとで当事者間で分割する制度です。

例えば、夫婦の一方が会社員として働き、もう一方が家事や育児を中心に生活していた場合などに関係することがあります。

ただし、年金分割は、相手の年金受給額をそのまま半分受け取る制度ではありません。

分割の対象となるのは、原則として婚姻期間中の厚生年金記録です。

また、年金分割には「合意分割」と「3号分割」があり、適用される条件や必要な手続きが異なります。

年金分割にも請求期限があります

2026年4月1日以降に離婚した場合、年金分割の請求期限は原則として離婚から5年以内となりました。

一方、2026年3月31日以前に離婚した場合は、原則として2年以内です。

なお、一定の裁判手続きが行われている場合などには、期限の特例があります。

年金分割は、離婚協議書に記載するだけで手続きが完了するものではありません。

必要に応じて年金事務所などで手続きを行う必要がありますので、早めに制度を確認しておくことが大切です。

⑦ 離婚後の連絡方法やその他の約束

最後に、離婚後のお互いの約束事についても整理しておきましょう。

例えば、次のような内容です。

  • 養育費や子どもに関する連絡方法
  • 住所や連絡先が変わった場合の通知
  • 家財道具や私物の引き渡し
  • 共有している契約やサービスの解約
  • 離婚に伴う金銭関係の清算
  • 今後の金銭請求に関する取り決め

特に、離婚協議書には「清算条項」と呼ばれる条項を設けることがあります。

清算条項とは、離婚協議書で定めたもの以外に、当事者間に債権債務がないことなどを確認する条項です。

これによって、離婚後に金銭関係の問題が蒸し返されることを防ぐ効果が期待できます。

ただし、清算条項の内容によっては、本来請求できたはずの権利についても影響が生じるおそれがあります。

そのため、十分に財産や請求関係を整理したうえで、慎重に内容を検討する必要があります。

また、DVなどの事情があり、相手方に住所や連絡先を知られたくない場合には、安全を優先した対応が必要です。

すべての夫婦について、住所変更などの通知義務を設けることが適切とは限りません。

離婚協議書と公正証書は何が違う?

離婚協議書を作成する際、「公正証書にした方がよいのでしょうか?」という疑問を持つ方もいらっしゃると思います。

通常の離婚協議書は、夫婦間で合意した内容を私文書としてまとめたものです。

一方、公正証書は、公証人が法律に基づいて作成する公文書です。

両者には、証明力や強制執行に関する違いがあります。

例えば、養育費の支払いについて、一定の要件を満たした強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておけば、相手方が約束どおりに支払わなかった場合に、別途訴訟で判決を取得することなく強制執行を申し立てられることがあります。

ただし、公正証書に記載すれば、すべての約束について直ちに強制執行できるわけではありません。

強制執行認諾文言による執行力は、基本的に一定の金銭の支払いなど、法律で認められた範囲に限られます。

また、2026年4月からは、一定の養育費債権について先取特権を認める制度も導入されています。

そのため、「公正証書がなければ養育費を強制執行できない」という説明も正確ではありません。

それぞれの制度の特徴を理解したうえで、必要な書類を検討することが大切です。

離婚してからでも離婚協議書は作れる?

ここまで読んで、「すでに離婚してしまったけれど、今からでも書類を作れるのだろうか」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

結論として、離婚後であっても、当事者間で合意できる事項について書面を作成することは可能です。

例えば、離婚時に養育費を取り決めていなかった場合でも、離婚後に話し合って養育費の金額や支払方法を決めることができます。

また、親子交流や財産分与などについても、離婚後に合意内容を書面化することが考えられます。

ただし、財産分与や年金分割などには請求期限があり、すべての問題をいつまでも解決できるわけではありません。

また、離婚後はお互いの生活環境が変化し、話し合いそのものが難しくなることもあります。

そのため、できる限り離婚前に必要な事項を整理しておくことが望ましいでしょう。

離婚協議書は、離婚後の安心のために作るもの

離婚は、夫婦にとって大きな人生の転機です。

さまざまな事情や感情がある中で、将来のことまで冷静に話し合うのは、決して簡単ではありません。

しかし、離婚後の生活を考えれば、養育費や財産分与、子どもの養育に関する約束など、できる限り明確にしておきたいことがあります。

特に、2026年からは共同親権制度が導入され、離婚後の子どもの養育について、父母がどのように関わっていくのかを具体的に考えることが重要になっています。

離婚協議書は、決して相手を一方的に縛るための書類ではありません。

夫婦が話し合い、納得した約束を記録することで、お互いが新しい生活を始めるための土台となるものです。

そして、子どもがいる場合には、子どもの生活と将来を守るための大切な準備にもなります。

「離婚することは決まったけれど、何を取り決めればよいかわからない」

「口約束だけでは心配なので、きちんと書面に残しておきたい」

そのような場合には、専門家に相談することも一つの方法です。

離婚協議書の作成は行政書士にご相談ください

行政書士権藤涼太事務所では、福岡県久留米市を拠点に、離婚協議書の作成に関するご相談を承っています。

離婚に伴う養育費、財産分与、親子交流などについて、当事者間で合意した内容を整理し、書面として作成するお手伝いをしています。

また、公正証書による離婚協議書の作成をご希望の場合にも、必要な書類の準備や文案作成など、行政書士として対応可能な範囲でサポートいたします。

なお、相手方との交渉が必要な場合や、親権・財産分与などについて争いが生じている場合には、弁護士への相談が適切となることがあります。

当事務所では、それぞれの状況を踏まえ、行政書士として対応できる業務を適切にご案内しています。

離婚後の生活を安心して始めるためにも、まずは必要な取り決めを一つずつ整理することから始めてみてはいかがでしょうか。


法令確認・参考資料

確認日:2026年10月

記事の法改正に関する部分は、以下の一次情報を参照しています。

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この記事を書いた人

福岡・久留米を拠点に活動する行政書士。創業支援・補助金・許認可申請を中心に、小さなビジネスの立ち上げから法務面のサポートまで幅広く対応。WebメディアやSNSを活用した広報支援にも力を入れており、事業者の「想いをカタチにする」お手伝いがライフワーク。
このコラムでは、実務に役立つ情報や行政書士としてのリアルを発信中。

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