古民家で民泊を始めたい!開業までの流れと必要な手続きを解説

古民家で民泊、始められる?普通の家を宿にするには?

「使っていない実家を宿泊施設として活用したい」

「古民家を購入して、外国人観光客向けの民泊を始めたい」

「田舎の一軒家を改装して、一棟貸しの宿にできないだろうか?」

最近では、こうした古民家や空き家を活用した宿泊事業に関心を持たれる方もいらっしゃいます。

昔ながらの梁や柱、縁側、畳のある和室。新築の建物にはない魅力を持つ古民家は、宿泊施設としても十分に可能性があります。

しかし、ここで一つ注意したいことがあります。

「人が住める家」と「お客様を有料で宿泊させられる建物」は、必ずしも同じではないということです。

古民家を宿泊施設として活用する場合、建物の状態だけでなく、旅館業法、住宅宿泊事業法、建築基準法、消防法など、複数の法令を確認する必要があります。

今回は、古民家を民泊として活用したい方に向けて、開業前に知っておきたいポイントを解説します。

目次

1.そもそも古民家で民泊はできるの?

結論からいえば、古民家でも、必要な条件を満たせば民泊や宿泊施設として営業することは可能です。

ただし、建物が古民家だからといって、特別に営業が認められるわけではありません。

一般的に「民泊」と呼ばれている宿泊サービスにも、法律上はいくつかの営業形態があります。

代表的なものが、次の2つです。

  • 旅館業法に基づく「簡易宿所営業」
  • 住宅宿泊事業法に基づく「住宅宿泊事業(民泊新法)」

どちらも古民家を活用する方法として考えられますが、営業できる日数や建物に求められる条件、必要な手続きなどが異なります。

そのため、まずはどの制度を利用して宿泊事業を行うのかを検討することが重要です。

2.簡易宿所営業と住宅宿泊事業は何が違う?

① 簡易宿所営業|本格的に宿泊事業を行いたい方向け

簡易宿所営業は、旅館業法に基づく営業形態の一つです。

宿泊する場所を多数人で共用する構造・設備を主とする施設が対象となり、古民家を活用した一棟貸しの宿泊施設などでも検討される制度です。

大きな特徴は、法律上、年間の営業日数に180日という制限がないことです。

例えば、週末だけでなく平日も含めて通年営業したい場合や、宿泊事業を本格的な収益事業として育てたい場合には、有力な選択肢となります。

ただし、営業するためには保健所などを通じて旅館業法上の許可を取得する必要があります。

客室の面積、換気、採光、衛生設備などの構造設備基準に加え、建築基準法や消防法への適合も確認しなければなりません。

特に古民家の場合は、建物の改修や設備工事が必要になるケースも考えられます。

なお、一棟貸しであれば必ず簡易宿所営業に該当するわけではなく、施設の構造や営業形態によっては旅館・ホテル営業として扱われる場合もあります。

② 住宅宿泊事業|住宅を活用して民泊を始めたい方向け

住宅宿泊事業は、いわゆる「民泊新法」に基づく制度です。

旅館業法上の営業許可とは異なり、住宅宿泊事業法に基づく届出によって事業を開始する仕組みです。

最大の特徴は、年間180日以内という宿泊提供日数の制限があることです。

ただし、住宅宿泊事業として利用できる建物には条件があります。

まず、台所・浴室・便所・洗面設備の4つが必要です。

さらに、その建物が次のいずれかの居住要件を満たしている必要があります。

  • 現に人の生活の本拠として使用されている住宅
  • 入居者の募集が行われている住宅
  • 所有者などが随時居住するために使用している住宅

つまり、単に空き家であるというだけでは、住宅宿泊事業の対象になるとは限りません。

長年誰も住んでいない古民家を購入し、宿泊事業専用の建物として使おうとする場合などは、特に居住要件の確認が重要になります。

また、住宅宿泊事業であっても消防法令への適合や安全確保の措置が必要です。届出だけすれば、どのような建物でも営業できるというわけではありません。

3.古民家で特に注意したい「建築基準法」の問題

古民家を宿泊施設にする場合、特に慎重な確認が必要になるのが建築基準法です。

一般住宅と宿泊施設では、建物の用途が異なるためです。

例えば、住宅として使用されていた建物を簡易宿所として活用する場合、建築基準法上の「用途変更」に該当することがあります。

ここで知っておきたいのが、用途変更の確認申請です。

一定の用途変更では建築確認の手続きが必要になりますが、用途変更する部分の床面積が200㎡以下の場合は、原則として用途変更の確認申請が不要となります。

ただし、ここは誤解されやすいポイントです。

「確認申請が不要」=「建築基準法の基準を満たさなくてもよい」という意味ではありません。

確認申請の対象とならない場合でも、用途変更後の建物に適用される建築基準関係規定への適合が必要です。

古民家では、建築当時の図面が残っていない、増築部分の履歴が不明、検査済証が確認できないといった問題もあります。

また、建物が現行基準に適合していない場合でも、建築時期や改修履歴などにより、既存不適格建築物としての取扱いを検討できることがあります。

したがって、古民家を簡易宿所として利用する際は、建築士や行政の建築担当窓口に確認しながら進めることが大切です。

なお、住宅宿泊事業についても、建築基準法上の取扱いや必要な安全措置を個別に確認する必要があります。

4.古民家ならではの「消防設備」の問題

もう一つ、忘れてはいけないのが消防法です。

昔ながらの木造住宅は、現在の宿泊施設を想定して設計された建物ではありません。

そのため、宿泊施設として利用する際には、消防用設備の設置や避難経路の確保などが必要になる場合があります。

例えば、建物の条件によっては、次のような設備が求められます。

  • 消火器
  • 自動火災報知設備
  • 誘導灯などの避難設備

必要となる設備は、建物の規模、階数、構造、宿泊者の利用範囲、管理者の居住状況などによって異なります。

また、簡易宿所営業と住宅宿泊事業では消防法令上の取扱いが異なる場合があります。

古民家の場合、配線工事や設備設置のために想定以上の費用が発生することも考えられます。

そのため、改修工事を進める前に、管轄の消防署へ相談することをおすすめします。

せっかく立派な古民家を改修しても、後から消防設備の追加工事が必要になれば、予算や開業予定に大きな影響が出てしまいます。

5.「その場所で営業できるか」も確認が必要

建物そのものに問題がなくても、立地条件によっては希望する営業形態が認められない場合があります。

特に簡易宿所営業では、建築基準法上の用途地域によって宿泊施設として利用できるかどうかが変わります。

また、市街化調整区域にある建物では、都市計画法上の制限についても確認が必要です。

地方の古民家や農村部の住宅では、こうした土地利用に関する問題が生じることもあります。

住宅宿泊事業についても、建物の所在地によっては条例による営業日数や実施区域などの制限が設けられている場合があります。

「周りに住宅が少ないから大丈夫だろう」

「以前は普通に人が住んでいたから問題ないだろう」

そう考えて物件を購入してしまうのは、少し危険です。

宿泊施設として使用できるかどうかは、物件の所在地と建物の状態を踏まえて判断する必要があります。

6.物件購入やリフォームの前に確認しておきたいこと

古民家を宿泊施設として活用したい場合、次のような順序で検討すると、開業に向けたリスクを整理しやすくなります。

まずは、物件に関する資料を集めること。

建物の登記事項証明書、建築確認関係書類、検査済証、平面図などがあれば、事前調査に役立ちます。

次に、どのような営業をしたいのかを考えます。

年間を通して営業したいのか、週末や繁忙期を中心に運営したいのか。自分で管理するのか、管理業者に委託するのか。

こうした事業計画によって、適した制度も変わってきます。

そのうえで、保健所、建築担当窓口、消防署などに確認し、必要な改修工事や申請手続きを整理します。

特に大切なのは、物件購入や大規模なリフォームを決定する前に、宿泊施設として利用できる見込みを確認しておくことです。

古民家の購入価格が安くても、法令への適合に必要な改修費用が高額になる場合があります。

購入費用だけでなく、改修費用、消防設備費用、申請費用、開業後の維持管理費用まで含めて検討することが、無理のない事業計画につながります。

7.古民家の魅力を活かしながら、安全な宿泊施設へ

古民家には、現代の建物ではなかなか再現できない魅力があります。

長い年月を経た木材の風合い、季節の移ろいを感じる庭、どこか懐かしい室内空間。

こうした魅力を活かして宿泊施設を運営することは、空き家の有効活用だけでなく、地域の活性化にもつながる可能性があります。

一方で、宿泊事業は、お客様の安全を預かる事業でもあります。

古民家ならではの雰囲気を大切にしながら、法律上必要な基準を満たし、安心して宿泊できる環境を整えることが重要です。

「この古民家で民泊を始められるだろうか?」

そう思ったときは、建物を改修する前に、まず必要な許可や届出、建築・消防上の条件を整理することから始めてみてください。

行政書士権藤涼太事務所では、福岡県久留米市を拠点に、旅館業(簡易宿所営業)の許可申請や住宅宿泊事業の届出に関するご相談を承っております。

古民家や空き家を活用した宿泊事業をご検討の方は、お気軽にご相談ください。

※本記事は2026年10月時点で確認できる法令・公的資料に基づく一般的な解説です。実際の営業可否や必要な手続きは、物件の所在地、建築状況、営業形態、自治体の条例・運用等によって異なります。

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この記事を書いた人

福岡・久留米を拠点に活動する行政書士。創業支援・補助金・許認可申請を中心に、小さなビジネスの立ち上げから法務面のサポートまで幅広く対応。WebメディアやSNSを活用した広報支援にも力を入れており、事業者の「想いをカタチにする」お手伝いがライフワーク。
このコラムでは、実務に役立つ情報や行政書士としてのリアルを発信中。

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